滑空展 / 2016
鉄の特性にある磁性は、身近に感じられる性質でありながらその存在は壮大なものである。地球のコアの主成分でもある鉄は、磁場を作り出し、地上を守りあらゆる生物の身体に影響を与えている。中でも鳥類は、身体の機能に優れた磁覚を持ち、地球磁場を視覚的に捉えている可能性があるという。対して私たち人間の磁覚は退化したとみられている。鉄と鳥、今回はこの二つを結び鳥類の生態に迫り考察する中で第六感とも言われる知覚に意識を向けてみたい。
Pigeon record
人類が誕生する遥か以前、大地を見下ろし、空を羽ばたいていた鳥類。環境の変化に適応し手は翼へと姿を変え、飛翔をし、二足歩行をする生物へと進化した。進化の過程で羽ばたくという生態に辿り着いた鳥は、身体の軽量化が進み様々な部位が空洞化されていった。それは骨や内臓、羽毛、全身のあらゆる部分に至る。私たちの身体を超える機能を持つ鳥類、飛翔できるその姿を目にするとつい憧れのまなざしを向けてしまう。そしてその憧れは探求へと通じていく。
本展示は、身近な存在の鳥類である鳩(ドバト)の観察記録から始まる。人と鳩には古くから密接な関係があり、古代には伝書鳩として、ある時代には軍事用途として、その優れた飛翔能力と帰巣本能により人々の通信手段となっていた。また、「鳩カメラ」による空撮撮影といった歴史もある。これも鳥類が持つ磁覚機能によって、上空でも正確に方角を把握できることが背景にある。自らの身体では飛翔できない人間。そこにみる進化の分かれ道から改めて私たちの生物としての姿、存在について目を向ける。進化にとじこめられた時間を想像し、日常の風景を俯瞰する。
Field 316°
Art works : EMU NAGASAKA
Material : steel plate
Technique : corrosion
Date : 2016
Lightly
Art works : EMU NAGASAKA
Material : steel plate
Technique : hammering , heating
Date : 2016