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material for material

material    : iron plate , iron oxide 

technique  : painteing

concept

地球上の鉄の起源のひとつとして、遡ること始生代、まだ酸素のない地球での話。
長い間降りそそいだ酸性雨から海がつくられた。海中には地表から流れ出た鉄分と、海底の火山活動で噴き出た溶岩から大量の鉄が溶け込んだ。やがて酸素のない海中に光合成をするバクテリアがうまれ、酸素をつくり出した。溶け込んだ鉄は酸化により固体化すると、海底へと沈殿し、
堆積した酸化鉄の層は縞状の鉄鉱床を形成した。約20億年という時へ経て、地球上に大規模な鉄資源がつくられた。

現代まで製鉄の原料である多くの鉄鉱石は、この縞状鉄鉱床から採掘されている。
この鉱床から採れる赤鉄鉱(酸化鉄)は、人類がはじめて利用した有色顔料といわれるベンガラの原料でもある。鉄鋼の資源として利用される以前から酸化鉄は人の手によって素材となり、洞窟壁画や石器、土器、古墳など古くから生活や文化に中に取り入れられていた。無機顔料であるベンガラは様々な耐性があることから、当時の生活文化の記録材料としても優れ、また地球の歴史を記憶した材料でもある。

酸化鉄という同一の原料から成る鉄板とベンガラは、画面と顔料という関係性でありながら一つの素材としての記憶を共有していくベンガラの粒子が一筆ごとに影響し重り合う様相は、地層や鉱石の断面の様に複雑な層を生み構造をつくりだす。素材に素材を重ねていく、その作業は日常のあらゆる物事を通し行われ、作品制作もその一つといえるだろう。人々の営みの中で素材は循環し、時を超えて交じり合う。「material for material」、この世界のあらゆるものは素材となり、そして素材から成り立つという考えのもと。地球上におこる偶然性と必然性、そこにみる強さや美しさ、その根源を辿っていく。

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